2025年11月 歌舞伎座・夜の部 観劇記 〜予測不能の笑撃ww三谷かぶきは止まらない〜

2025年11月27日

2025年11月 歌舞伎座・夜の部 観劇記 〜ダブル六郎の笑撃ww三谷かぶきは止まらない〜

2025年11月25日、歌舞伎座「吉例顔見世大歌舞伎」夜の部を観劇してまいりました! ☁️☂️
夜の部の注目は、なんと言っても6年ぶりに歌舞伎の舞台に帰ってきた三谷幸喜作品『歌舞伎絶対続魂(ショウ・マスト・ゴー・オン)』。この新作の上演とあって胸が高鳴りますね〜😆 ✨

やや空模様が怪しい中、歌舞伎座へ到着。チケットを発券して筋書きも購入し、まずはお楽しみの舞台写真コーナーへ直行🎬

お目当てはもちろん、今月大活躍の中村莟玉(まるる)の写真。「今月は多い」とは聞いていましたが……多すぎじゃろ!!😮 シングルカットだけで20枚もあるうえに、ほかの役者さんとのツーショット・スリーショットも多数。「これはもう、まるる写真祭りでは?」というラインナップでした🎉

その中から、今回は彌十郎&染五郎幸四郎&獅童との3ショットという、なかなかレアな組み合わせの2枚を購入。どれも味わい深い写真で楽しいのですが、せっかく番号が振ってあってリストもあるのに、売場では全部は番号順に並んでいないのがちょっと……。数字通りに並べてくれたら、もっと探しやすいのになあと思いつつ場内へ向かいます📂

外はしとしとと雨が降り始めていましたが、準備も整ったところで、いざ開演へ!🎭  

途中には、今回の観劇で思いついたネタ絵のおまけコーナーもありますので、先に見たい人はコチラをクリックして楽しんでいただいて、そのあとには、この「吉例顔見世大歌舞伎」がどれだけ注目を集めたのか、予約数のデータもご紹介しています📈


🌸 『當年祝春駒』 ― 華やかなる曾我の世界

『當年祝春駒』の絵看板
『當年祝春駒』の絵看板

最初の演目は舞踊「當年祝春駒(あたるとしいわうはるこま)」。「対面」でおなじみの顔ぶれが華やかに舞い踊り、夜の部の開幕を寿ぐ一幕です🎊

幕が開くと、舞台いっぱいに並ぶ長唄連中のみなさん……と思いきや、いきなり客席から飛ぶ大向うの声。
三右衛門っ!
え、「サンエモン? 誰?」と一瞬戸惑いましたが、どうやら唄い手の中心である鳥羽屋三右衛門さんのことでしょう。さすがプロの大向う、渋いところをついてきますね〜😁

などと感心しつつ三階席から見下ろすと、舞台の真ん中にはポッカリと大きな穴。セリが開いているのが丸見えなのも、この席の「お得ポイント」なのか「見なきゃよかったポイント」なのか……😅

そのうち舞台技術がさらに発達していくと、こうしたセリの穴も客席からは一切見えなくなる日が来るのかもしれませんね。そんなことをぼんやり考えているうちに、いよいよセリがせり上がってきます⏬

姿を現したのは、大磯の虎・中村米吉工藤祐経・中村歌六小林朝比奈・中村虎之介化粧坂少将・中村玉太郎の4人。華やかな衣裳に、ピシッと決まった立ち姿。せり上がってきた瞬間のあのビジュアルは、まるで精巧なフィギュアを並べたディスプレイケースを覗き込んでいるようで、思わずうっとりとしてしまいました。まさに歌舞伎の様式美全開です✨

ここに曽我五郎・中村萬太郎曽我十郎・中村橋之助も加わり、優雅に舞い踊ります。橋之助くんは今回の公演期間中に婚約を発表したばかりで、まさにおめでたいムードの真っ只中。とはいえ、舞台上では特に浮かれた様子も見せず、きっちりと役に集中しているご様子。一方の萬太郎くんは、筋書きのコメントで「五郎ができる役者を目指してきた」と語っているだけあって、気合い十分。一挙手一投足から「おれが五郎だ!」という熱が伝わってきます💪

やがて場面が進み、五郎が舞台上で衣裳替えをする場面へ。赤い隠し幕の前に対になって並ぶ玉太郎&米吉の姿が、本当に美しい……。ふわりとした色気と、若いエネルギーが同居しているような、なんと美しいことよ……眼福です😍

ラストは「対面」おなじみの、巻狩の通行手形を祐経が兄弟に渡し、「また会おう」と約して幕。短い時間ながらも、歌舞伎舞踊の美しさと役者たちの華やかさをたっぷりと堪能できた、贅沢な一幕でした〜🎶


🎭 笑撃の嵐!カオスすぎる舞台裏『歌舞伎絶対続魂』

『歌舞伎絶対続魂(ショウ・マスト・ゴー・オン)』の絵看板
『歌舞伎絶対続魂(ショウ・マスト・ゴー・オン)』の絵看板

さてさて、華やかな舞踊『當年祝春駒』を堪能した後は、お待ちかねの『歌舞伎絶対続魂(ショウ・マスト・ゴー・オン)』。三谷幸喜による“三谷かぶき”の6年ぶり新作とあって前評判も高く、歌舞伎美人の初日レポートには「上演中の場内は大爆笑の連続」との記載も😆

正直なところ、今までもこういう風に「爆笑」とか書かれていた演目はありましたが、そんなに笑えたことなかったような……まあ、何事も実際に観てみないとわかりません🤷

毎度観劇前には筋書きであらすじや登場人物を確認するのですが、この演目に関しては「ネタバレ要素があるので、観劇後に読むほうがいいですよ」という趣旨の注意書きが。ならば、今回は読まずに観ることにしましょう。さあ、開演!🚀

⚠️ ご注意
ここでは物語のあらすじを追うのではなく、わたくしミナミが「これは!」と思ったことを役者ごとに紹介していきます。細かいあらすじを知りたい方は、11/30まで配信されているオンデマンド配信をぜひご覧ください!また、多少のネタバレを含みますので、「これから観るから絶対ネタバレは嫌だ!」という方は、観劇後に読むことをおすすめします 📝

幕が開くと、どこかの芝居小屋の舞台裏。いきなり まるる 登場やんけ!というところから始まります 😆

舞台裏が出てくるのは、今年4月の『木挽町のあだ討ち』や、令和2年国立劇場での『幸希芝居遊(さちねがうしばいごっこ)』でもありましたが、こういうときって役者の「素」が見える感じでいいんですよね。……まあ、正確には「素を見せる演技」なんでしょうけど 😉

最初に目についたのが、中村鴈治郎演じる頭取・三保右衛門。鴈治郎さんと言えば映画『国宝』に出演した歌舞伎役者ですね。作中でもちゃんと「国宝」ネタが出てきましたが、個人的には映画の中にあった「吉沢亮に蹴りを入れる鴈治郎」をぜひやってほしかったところです(笑)。なんだか偉そうな立場の人の役ではあるのですが、付け打ちをやったり、呼び出しをやったり、実は一番動き回っていたのはこの人かもしれませんね 😂

そして松本幸四郎演じる狂言作者・冬五郎。いろんなことを押し付けられて「あ〜困った困った」という感じが実によく似合います。この三枚目感が本当に好きですね 😅
しかし終盤では、なんと舞台で狐忠信を演じることに!しかも、これがおそらく幸四郎の初『四の切』忠信ですよ。先ほど挙げた『幸希芝居遊』の中でも、ちょっとだけ忠信を演じる場面がありましたが、そのときは「オレ四の切やったことないんだよな〜」と嘆いていました。願いがかなって良かったね、という気持ちに加え、今回は獅童との「ダブル狐忠信」という、たぶん史上初(?)のおまけ付き!🦉

幸四郎と言えば、もちろん息子の市川染五郎も忘れてはいけません。今回は見習い・番吉と、義経役者の虎尾の二役でした。ちょいちょい役が入れ替わる中で、お約束の「おい虎尾、番吉はどこ行った」では、番吉の身代わりを捕まえて後ろを向いてセリフを喋る、いわば腹話術トークも披露。イケメン役だけでなく、しっかり笑いも取れるポテンシャルを感じました 😎

冬五郎(幸四郎)が、文句ばかり言う番吉(染五郎)相手に「若いうちにいろんなことをやっておくべきだ」みたいなことを言う場面もありましたが、これは『木挽町のあだ討ち』でも感じた、幸四郎家の家庭内でのリアルな一場面なのかもしれませんね😏

そして嬉しい誤算がまるる(五十鈴)ですよ。体感としては、ほぼ出ずっぱりと言っていいくらいの活躍ぶり。鴈治郎・頭取からも「あの子はいい子やな」と太鼓判を押されるほどでした。静御前の役をゲットしたときの「よっしゃ〜!」は、アドリブでやってみたら三谷さんもOKを出してくれたとか。静御前役は“お手の物”のはずですが、今回はコメディなので、あえてどこか素人っぽく演じるのがまた面白いところ。舞台写真にもかなりふざけた表情のカットがあって、「あれにしとけばよかったかな〜」とちょっと後悔 😅

静御前と言えば、元々演じていたのは坂東彌十郎扮する”いせ菊”。こんなん俳優祭でもお目にかかれないのでは、というくらいのレアキャラ設定です🥹 舞台上で「あごが外れそうになる」とか……映像作品なら実際に舞台上で彌十郎がやらかす様子が映るのでしょうが、これ自体が舞台なので、袖から他の役者たちが実況するのを聞いて、それを観客が想像するというスタイル。こういう「見せずに想像させる」笑いも、なかなか味わい深いです😂

中村獅童は、酔っ払って出てくる看板役者・小平次。子どものように駄々をこね、諦めてさっさと帰ろうとするなど、自由奔放そのもの。でも、どこか自信のない内面を無理して隠そうとしているようにも見えて、そのアンバランスさが可愛らしい役でした。っていうか、一番「素」が出てるって感じかな😜

しかし今回、私が一番笑ったのは、橋之助(天太郎)&歌之助(赤福)兄弟によるダブル亀井六郎ですね。

『四の切』に登場する亀井六郎は、赤っ面の派手な衣裳で「ドタドタ」と大きな足音を立てて登場する、私の大好きなキャラクター。そんな六郎が、いろんな手違いの結果、なんと二人出てくることに。時間がない中で冬五郎たちがひねり出した結論が”分身の術”。EXILEばりに踊りながら分身した(ということにした)二人は、そのまま舞台へ飛び出していきます💃

そんなダブル亀井六郎に連れられて舞台から戻ってきた忠信役の小平次の一言、「オレはもうだめかもしれない、こいつ(六郎)が二人に見えるんだ〜」これにはまた爆笑。確かに、事情を知らずに見たらそう思うしかないわ〜🤣

さらに後半の舞台場面では、ひとり鼓を持って舞うまるる・静御前……と思いきや、降板させられたのに諦めきれない彌十郎・静御前が乱入!と、そこへ背後から、まさかのダブル亀井六郎が再び”分身の術”スタイルで登場し、彌十郎・静を捕まえて舞台袖に引きずり下ろすという展開にwww🤣
もう勘弁して、というくらいここが私の笑いマックスでした〜🤣

他にも笑いどころは数え切れませんが、きりがないので逆にちょっとイマイチと感じたという点も。

まず、ゲスト出演の浅野和之。彼は『ワンピース歌舞伎』や『新・水滸伝』など澤瀉屋の演目によく出ている方ですが、私はドラマ『最後から二番目の恋』シリーズで、飯島直子の旦那役として演じていた”とぼけたおじさん”のイメージが強く、とても好きな役者さんです。今回の骨接ぎも”とぼけた役”ではあったのですが、もう少しセリフを聞きたかったかな、というのが正直なところ。腰元に扮して舞台に取り残されてしまう場面も、ダブル忠信と一緒に踊り出すまでの間ほとんど動きがなく、かえって邪魔な感じになってしまっていたのが少し惜しく感じました😔

片岡愛之助の座元・半蔵も、もっと責任逃れしようとあたふたしてくれたら良かったな、という気がします。その上で最後に急に腹を据えて「オレが責任をとる!」という感じになったら、いわゆる歌舞伎の「モドリ」として、より映えたのではないかと感じました。ここも、やや残念ポイント💬

そして松本白鸚さんは、どんどんおじいちゃんになっている感じがします。3月の『忠臣蔵』や9月の『菅原伝授手習鑑』の時もまったく歩いていませんでしたが、今回はセリフからもおじいちゃん感がありありと……もう83歳ですからね。昼の部に出演されてる同い年の七代目尾上菊五郎さんはどうだったんでしょうか? そっちも気になります🤔

とにもかくにも、劇中劇の幕はどうにかこうにか締まり、蓬莱座の芝居は無事に終わったようです。
舞台裏でしみじみとする冬五郎。
幸四郎の筋書きコメントには、こんな一文がありました。

笑わせたり、ふざけたりするところの一切ない芝居です。必死な姿を笑っていただき、感動に繋げられるようにと思っています

そういえば、この芝居に出てくる人たちは、みんな本気で芝居をやろうとしているだけで、別に笑いを取りにいっているわけではないんですよね。でも必死にやっている姿は、傍から見るとどこか滑稽であり、同時に胸を打つものでもある……😭

なるほど、これが三谷幸喜の真髄!とまで言い切れるかどうかはさておき、少なくとも私は、この幸四郎のコメントに深く納得するものがありましたね🙏


というところで、今回の観劇記に関しては、ひとまずこれぎりとしたいと思いますが――

まだご覧になっていない方には、松竹オンデマンドの
「三谷かぶき『歌舞伎絶対続魂(ショウ・マスト・ゴー・オン) 幕を閉めるな』ライブ配信」をぜひおすすめしたいです。📺


👉️ 三谷かぶき『歌舞伎絶対続魂(ショウ・マスト・ゴー・オン) 幕を閉めるな』オンデマンド配信ページはこちら

11月30日まで視聴可能とのこと。
この記事を読んで気になった方は、ぜひ一度チェックしてみてください📅

😂🍡 おまけ1 ― ネタ絵で楽しむ『吉例顔見世大歌舞伎』

さてさて、ここからは “おまけコーナー” です。今回の観劇でミナミがふと思いついたネタを、イラストにしてみました。ゆるっと楽しんでいってください〜😊

※スマホで文字が読みづらいときは、画像をタップして二本指で拡大してみてください📱✨

まずは、腰元まるる(莟玉)が頭取(鴈治郎)相手に、映画『国宝』の話題を無邪気に振りまく場面。「リハではこんなやり取りがあったんじゃ…?」という、ミナミの完全なる空想です🤣

「国宝ネタ裏話」実はこんな話もあったかもという場面

いや〜私も『国宝』観ましたが、鴈治郎さんが吉沢亮くんを蹴り飛ばすシーン、あれは…演技と分かっていてもけっこう衝撃でした😳💥

あれで全国の吉沢ファンを敵に回したかどうかは定かではありませんが(笑)、その話を悪気なく突っ込んでしまう無邪気なまるる、そして「アドリブOK」と言った手前、ちょっと焦る三谷氏——
そんな構図のイラストでした。

実際の舞台でも、まるるがアドリブで「よっしゃ!」と叫ぶ場面があり、それについて三谷氏が「毎日やってください」と言っていた、と以下の記事で本人が語っています👇

🔗 三谷かぶきで拓く笑いの新境地 中村莟玉、舞台に花ひらく ― 令和を駆ける“かぶき者”たち Vol.17

そして2枚目は、この二人の“共通点”に注目した仲良しショットです🍡✨

芝居しながらのお団子はうまいと食べる、まるると鴈治郎

今回の舞台では、鴈治郎さん演じる頭取が“お団子”を食べるシーンがありましたが、まるるも『刀剣乱舞 歌舞伎』でまさに“お団子”を食べる場面を演じています。

ということで、舞台上で芝居しながらお団子を食べる、まさかの “お団子仲間” の二人を描いたイラストでした😆💕

📊 おまけ2 ― 予約数で見る『吉例顔見世大歌舞伎』

さて、恒例の予約状況チェックです。
今回の11月公演、ミナミが目視で確認した数値を共有します 📈

昼の部(『鳥獣戯画絵巻』ほか)

  • 全体(23日間/集計22日) 92%

夜の部(『歌舞伎絶対続魂』ほか)

  • 全体(23日間/集計22日) 99%

昼夜とも大入りという感じですが、特に夜の部は満席にならなかったのは記録上2日だけでした。(貸し切りは満席とカウント)やはり、三谷幸喜作品の人気と、歌舞伎を知らない人でも笑える面白さが良かったのでしょうか。

これらのデータは、ミナミが前日から開演30分前までの予約状況を目視で確認したものです。
あくまでご参考までに 📅


追記

今回私が観劇した前日(2025年11月24日)に、片岡亀蔵さんが火事で亡くなられました。悪党役がとてもよく似合い、脇役でありながら一目でわかる存在感を放つ役者さんでしたので、本当に残念でなりません。

『歌舞伎絶対続魂』の最後のカーテンコールが、どことなく控えめに見えたのは、亀蔵さんを偲んでのものだったのかもしれない……と感じました。謹んで御冥福をお祈りいたします。

片岡亀蔵さん追悼イラスト 
片岡亀蔵さん追悼イラスト 〜クロトワの名台詞とともに〜