2025年10月 歌舞伎座・第三部 観劇記 〜忠義と愛情、そして終幕へ〜

2025年10月17日、ようやく訪れた秋晴れの空のもと、歌舞伎座「錦秋十月大歌舞伎」を観劇してきました! 🍁😆☀️
今月の公演は、松竹創業130周年記念「三大名作一挙公演」の掉尾を飾ることになる、通し狂言『義経千本桜』 🐇🌸
今回もAプロ・Bプロの二部構成での上演となり、私は後半のBプログラムを第一部から第三部までを通しで堪能 ☺️
これまで「第一部」「第二部」の観劇記をアップしてきましたが、今回はラストの「第三部」を観劇したワタクシ”ミナミ”の感想となります。
最後に、この「錦秋十月大歌舞伎」がどれだけのお客さんの注目を集めたのかを予約数から紹介しますので、ぜひ最後まで御覧ください。
歌舞伎演目『義経千本桜』の、あらすじや登場人物についてなど詳しく知りたい方は以下の「歌舞伎の達人」記事を御覧ください。
📘 『義経千本桜』演目の詳細についてはコチラ
なお、今回の公演の「筋書」は、松竹公式オンラインショップ 🛍️
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🌸 吉野山 ― 恋と忠義のあいだで?
さて、第三部の始まりは『吉野山』。
正式には『道行初音旅(みちゆきはつねのたび)』といい、いわゆる「道行物」。本来は愛し合う男女がいちゃいちゃしながら旅するというはずですが、この『吉野山』はちょっと違います。ここで描かれるのは恋人ではなく、主従の関係。
にもかかわらず、有名な清元の詞章「恋と忠義はいずれが重い♪」で始まることもあるのか、どことなく「狐忠信は静御前へ密かに恋心を抱いているのでは?」という印象を受けてしまうんです。
実際、AIに『吉野山』を説明させてみると、毎度「密かな恋心」というニュアンスを入れたがるので、この誤解を持つ人はけっこう多いのかも(笑)
それはそうと、狐忠信を演じるのは尾上右近。うん、やはり今日も面長です(笑)
一方、静御前は第二部で権太の妹・お里を演じていた中村米吉。田舎娘から一転、華やかな姫姿へと変貌。さすがよく似合う。
右近とのコンビも文句なしの相性でした✨
咲き誇る桜のもと、戯れる二人。そして忠信は初音の鼓を受け取ると夢中になって静のことなど忘れたかのよう。その様子を怪しんで鼓を取り返そうとする静——
ここで忠信がキッと睨みつける名場面!
……なんですが、今回はちょっと睨みが優しめ?
「さわるな!」というより「え、これいるの?」くらいのトーンに見えました😅
そして来ましたおじゃま虫、逸見藤太・種之助登場!
道化役は派手で特徴的な存在とはいえ、いや〜目立ってましたね〜👀
ラストの方では狐忠信が花道から本舞台へ向かって笠を投げる場面がありますが、一瞬客席に飛び込むかとヒヤッとしますが無事舞台に着地🎯
全体としてはとても華やかで美しい『吉野山』でしたが、個人的にはやっぱり令和2年8月のコロナ休演明けの歌舞伎座で猿之助×七之助コンビが演じた『吉野山』が、舞台の再開を告げるものでもあったので記憶に強く残っています。あれを超えるような『吉野山』をぜひ演じてほしいものですね!✨
🦊 川連法眼館 ― 義経をめぐる狐の真実
ついに三大名作のラストのラストを飾る『川連法眼館』です。四段目の最後 “切” にあたることから通称『四の切』。
二代目・猿翁が宙乗りを復活させたことが有名ですが、この公演では宙乗りがあるのは團子が狐忠信を演じるAプロだけ。
ただ、公式サイトなどには「Bプロでは宙乗りはありません」というアナウンスはないので、あると思って観に来てがっかりした人もけっこういるのではないでしょうかね?
それはさておき、義経・梅玉登場です。『義経千本桜』のタイトル通り、最後は義経ちゃんと登場。第一部の中村歌昇からうってかわって、超ベテランの品格あふれる梅玉丈の義経です。ラストを締めるにふさわしい配役ですね〜✨
と、その前に出てきた川連法眼・嵐橘三郎にも注目!
歌舞伎役者の名鑑「かぶき手帖」では必ず一番目に出てくる役者さんです。あいうえお順だから “あ” で始まる唯一の役者だからというだけなんですが、なんだか目立って見えます😄
経歴を見ると、五代目・富十郎さんに入門して最初は坂東姓、その後中村姓に改名したりしながら、現在は六代目・嵐橘三郎を名乗っております。
渋い脇役として欠かせない役者さんですが、彼がいなくなると “嵐” 姓がなくなってしまうのがなんか寂しく感じそうです。ということで私の心の中では “絶滅危惧種役者” として意識しながら、出演している姿を見て安堵したいと思っております🦜
話がそれましたが、やってきました本物忠信・右近。
生真面目な忠信は正直面白みに欠けますが、その分、後に出てくる狐忠信とのギャップが楽しい😆
しかし、もっと注目しているのは亀井六郎・巳之助です。何と言ってもあの登場シーンのドタバタ感!
期待に違わず、ドタドタと足音立ててやってきました!
見るたびにいつも心の中で「うるせー静かに歩け!(笑)」って大向うをかけてしまいます。
後ろの駿河次郎も絶対「いつもうるせーなこいつ💢」と思ってるはず😂
と、お約束を楽しませていただいたところで、狐忠信登場!
”毛縫い”と呼ばれる狐装束に変わってからぴょんぴょん跳ねるのは、右近の真骨頂でしょう🦊✨
“初音の鼓”を親と慕いながら静と共にここまで来ました。彼がその気になれば鼓を静から奪って逃げることもできたでしょうが、それができないところが単なる獣ではない証拠でしょうか🦊
そんな狐の思いを察したのか、鼓を与える義経ですが……
与えていいものなの、それ?😅
なんて野暮なことを考えるのはやめときましょう(笑)🌸
肉親の愛情に恵まれなかった義経。この後は結局、愛する静とも離れ離れになっていきます。親の形見の鼓をもらって喜ぶ狐の姿を見る義経の心境はいかに……。
親孝行したくともできず、親代わりと慕っていた兄・頼朝とは仲違い。親孝行を願う狐に、自らの“源九郎”という名を与えたのは、きっと自分が果たせなかった思いを託したのでしょうね🥹
最後は悪僧たちを懲らしめて上手の木に狐忠信が登っていき、幕となります。
第一部・第二部が悲壮なラストだったのに対し、最後の第三部はちょっと心温まる幕引き。
宙乗りの派手さはなくても、存分に楽しめる舞台でした🌸
🎌 終わりに ― 忠義と愛情が交差する物語
これにて『義経千本桜』終幕です。
尾上右近、坂東巳之助、片岡仁左衛門という主役を勤めた面々だけでなく、ベテランから子役まで多くの役者さんたちによって支えられた舞台は、無事に千穐楽まで走り抜きました👏
第一部では、知盛が銀平としてお柳やお安と過ごした短い間の家庭の温もりを想像しましたが、第二部は親への孝行の思いが空回りする権太、第三部では親への孝行を願う源九郎狐と義経が描かれるなど、忠義だけでない家族の愛情を複雑に描いた物語だったなと感じます🦊。
また、川連法眼が最初「義経を裏切る」と言ったとき、妻の飛鳥が即座に自害しようとする場面がありましたが、それぐらいに忠義が重い時代。そんななかでも家族の愛情は時代をこえてかけがえのないもの――
だからこそ、この物語が長く受け継がれてきたのでしょうね🌸
十年後、もし通しで再演されるとしたら、そのときはまた違う感じ方ができるのかもしれません。
ひと月の公演を最後まで走り抜けた役者さんや裏方のスタッフの皆さん。そして実際に舞台を見に行かれたファンの皆様、最後までこの拙い文章を読んでくださったことに、心からの感謝を表します🙏
それでは、今回はこれぎり!🎭✨
📘 第一部、第二部の観劇記はこちら!
📊 おまけ ― 予約数で見る『錦秋十月大歌舞伎』
今回の『錦秋十月大歌舞伎』の予約状況です。
Aプロ
- 第一部(10日間) 99%
- 第二部(10日間) 84%
- 第三部(9日間) 99%
Bプロ
- 第一部(10日間) 98%
- 第二部(10日間) 100%
- 第三部(11日間・集計9日) 96%
全体的にかなり高い数字で、松竹もホクホクではないでしょうか😊。
特に仁左衛門さん出演のBプロ第二部は圧倒的な人気で、開演直後は少し空席も見られましたが、すぐに完売状態に。
團子(Aプロ)と右近(Bプロ)は数値上わずかに團子が上回りましたが、宙乗りの影響で座席数が減るため、実際の水準はほぼ同等と見てよさそうです。
Aプロ第二部は松緑さんが主役でしたが、やはり仁左衛門さんBプロとの比較ではやや分が悪かった印象。
これらのデータは、ミナミが前日から開演30分前までの予約状況を目視で確認したものです。
あくまでご参考までに📅。











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