2025年10月 歌舞伎座・第二部 観劇記 〜親子の情がすれ違う、哀しき運命の糸〜

2025年10月24日

2025年10月「錦秋十月大歌舞伎」が上演された歌舞伎座

2025年10月17日、ようやく訪れた秋晴れの空のもと、歌舞伎座「錦秋十月大歌舞伎」を観劇してきました! 🍁😆☀️
今月の公演は、松竹創業130周年記念「三大名作一挙公演」の掉尾を飾ることになる、通し狂言『義経千本桜』 🐇🌸
今回もAプロ・Bプロの二部構成での上演となり、私は後半のBプログラムを第一部から第三部までを通しで堪能 ☺️

今回は前回の「第一部」に続いて「第二部」を観劇したワタクシ”ミナミ”の感想です。

歌舞伎演目『義経千本桜』の、あらすじや登場人物についてなど詳しく知りたい方は以下の「歌舞伎の達人」記事を御覧ください。


なお、今回の公演の「筋書」は、松竹公式オンラインショップ 🛍️

👉️ 松竹歌舞伎座本舗(公式サイトはこちら)🔗

にて販売予定。
10/24現在、発売はまだのようですが、写真入り版の発売は10/26以降とのこと、写真入り希望の方は【舞台写真入り版】の表示を確認してくださいね📷

物語は時代物感あふれる展開から一転、”いがみの権太”とその家族たち庶民が巻き込まれた悲劇の物語へ。権太を演じるのは、この公演中に”文化勲章”の受賞が決定した現代の立役最高峰の片岡仁左衛門。そこに中村米吉・尾上左近らの若手役者が挑み、獅童息子の陽喜くん・夏幹くんも加わるというなんとも楽しみな布陣です ✨

🎖 文化勲章の輝きとともに――仁左衛門、至高の舞台へ

第二部は何と言っても注目は片岡仁左衛門丈!
彼が登場するBプロ第二部の舞台は、なんと10日間すべて満席!🎟️✨
しかも私が観劇した翌日10月18日には――まさかの文化勲章受章のニュース!
三大名作一挙公演のラストを、まさに神がかったタイミングで締めくくってくれました👏

『仮名手本忠臣蔵』大星由良之助、『菅原伝授手習鑑』菅丞相、そして『義経千本桜』いがみの権太――
まるで松竹130周年三大名作は仁左衛門のためにあったと言いたくなるほどの存在感です🔥

🌰 木の実 〜子役の笑顔からの、衝撃の幕開け〜

『木の実・小金吾討死』の絵看板
『木の実・小金吾討死』の絵看板

さて、始まりの演目『木の実』ですが、真っ先に目に止まるのは夏幹くん🌱
茶屋の前でのんびり座ってる姿がもう…可愛い!かわいい!🥹
見てるだけで癒やされるとはこのこと。

そして陽喜くん☀️
すっかりお兄ちゃんになって堂々たる風格。
あの初お目見えの日が昨日のことのように…いや、もう懐かしい😌
子供の成長の早さにしみじみします。

尾上左近は第一部の静御前から、今度は若衆・小金吾として登場🎭
お姫様も似合うけど、やっぱり若武者のほうがハマりますね!✨
清楚な雰囲気が残る若衆役、これはなかなかの好バランス。

若葉の内侍・門之助を加えて三人で椎の実を拾っていると――

🌪️登場、いがみの権太・仁左衛門!!!

出てきた瞬間、ミナミ(=私)に雷が走る⚡

「誰だこれは!? かっこよすぎじゃね!?」

どこが“いがみ”やねん!?
小悪党のはずが…これ完全に“色悪”じゃないですか!?😳

そんな権太が小金吾たちに因縁をつけて金を巻き上げようとする💰
怒った小金吾が刀に手をかけると――

寝転んだ権太が足をスッと伸ばして押さえる!

⚡再び衝撃⚡

「セクシーすぎる!!」

むかってくる美少年を、寝転んだ伝説的イケメンが両足で制す――
あの一瞬の構図、完璧すぎて息をのむレベル😳✨

男の私でも思わずうなったけど、お姉様方にはどう映ったのか…
その場の空気、確実に一度止まりましたね(笑)


ということで――
まさに衝撃の幕開けとなった第二部『木の実』🌰🔥
次の「小金吾討死」に向けて、すでにテンションは最高潮!😆

⚔ 小金吾討死 〜悲劇の若武者、戦いの果てに〜

さて、権太にまんまと金をせびられた小金吾一行を、さらなる悲劇が襲います。

必死に逃げる内侍と若君。その後ろから、髪を振り乱した小金吾と、それを追う捕手たち。舞台上は一気に緊迫した空気に包まれます😣

この場面は、縄を使った立ち回りで有名。確かに一人でもタイミングを誤ると流れが崩れそうな難所です。

そんな中、一人奮戦する小金吾・左近💥
刀を奪われ、その刀を捕手が放り投げる――見事キャッチ!…とはならず😂💦
会場の拍手もちょっとまばらに…しかしこれは難しい場面。次に期待!

それでもなかなか倒れない小金吾。
藪の中から不意に襲いかかる大之進・松之助をも倒しますが、ついに力尽きます。

そして倒れる瞬間――小金吾は後ろ向きにアタマを客席側にして倒れるのですが、ここでちょっと疑問🤔
これは第一部の典侍の局が自害した時と同じ倒れ方ですが、何か不自然に後ろ向きに回ったように見えます。客席に足を向けないための所作なのか、それとも演出上の流儀なのか…。

そこに現れた弥左衛門・歌六。倒れた小金吾を見つけると何を思ったか、刀を手に首を落とそうとします。でもどうしても踏ん切れない。
その葛藤のまま幕がスッ…と引かれていきました。


歌舞伎の立ち回りというと、『鳥居前』や『吉野山』のようなコミカルさを含んだ華やかさを思い浮かべますが、今回は全く違います。

奮戦虚しく散っていく若武者――まるで『白浪五人男』の山門上の弁天小僧、あるいは『大物浦』の知盛のような悲壮感。
それこそが、観る者の胸に深く突き刺さるのです。

主君の奥方と子息を守り、命を懸けた小金吾。
その美しくも儚い最期を、左近くんが見事に演じきりました👏

🍣 すし屋 〜悲劇的幕切れ、幼い役者の心に残るもの〜

『すし屋』の絵看板
『すし屋』の絵看板

そして第二部のメイン、『すし屋』です。

ここでいがみの権太・仁左衛門が、先ほどとは打って変わって生き生きとした“小悪党”ぶりを発揮!
まるで東京から田舎の実家に帰った瞬間、方言が戻ってくるような感じでしょうか😂 勘当された身ながら、やはり実家のすし屋は居心地がいいのでしょうね。この“地元感”の出し方が、まさに仁左衛門さんならではの味わい。さすがです👏

そしてキャスティングで気になっていたのが弥助役・中村萬壽。正直、「この場面はBプロのほうは息子の時蔵に譲るべきでは?」なんて思っていましたが――
いやぁ、なんのなんの。風格ありますね、まだまだ息子には譲れないか😳

弥左衛門女房は、老け役の安定感抜群な中村梅花。最後まで息子・権太への愛情がにじみ出ていて、見ていて胸が締めつけられます。

結局、権太が「親父殿のため」と信じて仕掛けた計略は空回りし、その親父殿の手で刺されてしまうという、なんとも悲劇的な幕切れ。

周囲が悲しみに包まれる中で、私が目を奪われたのは――
権太をじっと見つめる六代君・陽喜くん👦

片岡仁左衛門という稀代の役者が見せる“いがみの権太の最期”。それが、まだ幼い彼の目にはどんなふうに映っているのか…。

もしも陽喜くんが将来“いがみの権太”を演じることがあるなら、それは早くても30〜40年後くらいのことになるでしょう。

そのとき彼が、この日の仁左衛門丈をどう語るのか――
私がその場面を見ることはないかもしれませんが、ぜひ聞いてみたいものですね。

🎞 第二部まとめ 〜家族の愛が浮かび上がる、もうひとつの『義経千本桜』〜

以上で第二部も終わりました。

今回の『義経千本桜』を通して見ると、第一部と第三部は物語としてつながっていますが、第二部は少し独立した別の流れになっています。

しかしここで描かれているのは、より深く掘り下げられた“家族の愛情”です。

『木の実』でいがみの権太が息子・善太に見せる父親の顔。
それはそのまま、権太が父・弥左衛門に抱く孝行の思いへとつながっていくのでしょう。

そんな権太が、妻と息子を身代わりとして差し出す場面では、
「褒美を…お願いしますぜ」と言う声が次第に小さくなっていく――あの瞬間、胸が締めつけられました。


常々私は、
「普段悪いやつが、ちょっといいことしたくらいで急にいい人扱いされるのはおかしい」
…なんて思ってしまうような心の狭い人間(笑)ですが、
この物語を観ると、そんな単純な見方では見落としてしまう“人の情”があることを思い知らされます。


『すし屋』は自分の家族を犠牲にするという点で、『寺子屋』にも通じるものがありますが、最後に残る印象は少し違います。

  • 『寺子屋』は “無常感”
  • 『すし屋』は “虚無感”

――同じ親子の悲劇であっても、感じ取れる余韻はまったく異なる。
それこそが、『すし屋』が持つ独特の魅力なのかもしれません。


ということで、第二部の観劇記はここまで。
次はいよいよ『義経千本桜』の中でも最も人気の高い演目、
『川連法眼館(かわつらほうげんやかた)』の第三部へ――。

――See you soon. この後すぐ!😉