🍧筋書きアンケート 特別編『花競木挽賑』〜“かき氷”と“景色”からにじむ、役者の素顔と戦略〜

2025年8月30日

冒頭のネタ絵。Xでは触れましたが、見てない人のためにもう一度説明しますね。

八月歌舞伎座の一階喫茶室「檜」では、中村米吉監修による、”銀座はちみつレモンかき氷🐝🍋🍧”を販売しているのですが…
米吉は八月公演の『筋書のアンケート』で、好きなかき氷を”ブル−ハワイ”と答えてしまっていた!
というところから思いついたネタをイラストにしてみたものです。

ということで、八月納涼歌舞伎は、米吉くん監修のかき氷の話から気になって、『筋書』のアンケートをつらつら眺めていたのですが……

出てくる出てくる、役者たちの“地が出る”回答の数々!😆✨

今回のアンケート項目は全6つ👇

1️⃣ 今月勤める親子と演目の見どころについて教えてください
2️⃣ 好きなかき氷の味は?🍧
3️⃣ 理想の休みの過ごし方は?
4️⃣ 歌舞伎の裏方になるなら?
5️⃣ 今まで見た中で一番美しい景色は?🌄
6️⃣ 歌舞伎座で一番好きな場所は?

この中で特に、
「2️⃣ かき氷の味」&「5️⃣ 一番美しい景色」
この2つに注目してみました!

一番最後に今回思いついたネタ絵🎨をご紹介してますので、最後までじっくりご覧くださいませ〜👀✨🤣

🍧 かき氷の味に、個性は宿る!

まず「かき氷の味」ですが、多くの役者さんが「いちご」「宇治金時」「メロン」など、ただ味だけをポンと書いてる感じ。

もちろんそれでも問題はないんですが、“一言で終わる答え”からは何も伝わってこない…!

そんな中、この方のコメントは印象に残ります👇

中村勘九郎
「いちご一択です。海の家とか遊園地によくある真っ赤な、先がスプーン状になったストローで食べるシャリシャリしたアレです。」

いやもう、この描写力!!🍧
ただの“いちご味”じゃなくて、「記憶ごと語ってる」ところに、ファンへのサービス精神を感じませんか?👏

……で、その勘九郎の弟・七之助はこう↓

中村七之助
「ほぼ食べないです。シロップはあまりつけないので、子供の頃もあまり食べませんでした。」

へ〜そうなんだ😅
この“温度差”がまた兄弟のキャラの違いを浮き彫りにしてて、それはそれで面白いです。

そして次、こだわりの極地がこちら↓

中村扇雀
「“SHAVE ICE” Lilikoi(リリコイ)・Mango(マンゴー)・Melone(メローナ)のMIX」

リリコイ⁉️メローナ⁉️ なんですかそのフレーバー名…🤯
一気にハワイの風が吹いてきました。さすが美意識の人・扇雀さん、とてつもなく細かいこだわりを感じさせます。

ところが、息子・虎之介くんはというと…

中村虎之介
「かき氷食べません。」

あらら…🤣
親子でこのテンション差。これはもはや様式美でしょうか。

つづいて、思わず「聞いてるほうが困る」逆質問スタイルはこちら↓

大谷廣太郎
「抹茶味が一番ですね。おすすめのお店を教えてください。」

誰か教えてあげて〜😂

でね、こういう質問でやっぱり味が出るのが、ベテラン勢ですね。

片岡亀蔵
「つい食べすぎてお腹が冷えるイメージが強いため、ここ何年もご無沙汰していますが、もし食べるなら、白玉ぜんざいがいいかな。」

「温かい白玉ぜんざいをかけたかき氷」のことだと思われますが、何年もご無沙汰してる割には、妙に通な感じのチョイスです(笑)
でも「お腹が冷え」ないようにということで理にかなってますね〜🤔

そして、この人の場合は…

坂東玉三郎
「冷たいものはあまり頂かないのですが、選ぶとすれば抹茶でしょうか。」

抹茶🍵
“いただかない”と丁寧に断ってからの抹茶って…格式が違います!😳

この2人、どちらも「食べない」だけで終わらせないところがいいんですね。

“質問の意図”を汲み取って、ちゃんとファンに何かを伝える答え方をしている。

そういう意味では、「宇治金時」とだけ答えてる人より、はるかに印象に残るコメントになっています。

ここでちょっと話が飛ぶようで飛ばないんですが…
今回の公演には出てませんが、

  • 中村獅童がラーメンこだわりまくったり🍜
  • 尾上右近がカレー愛語りまくったり🍛
  • 尾上松也がなぜかキャンドルにハマってたり🕯️

これは単なる趣味の話とか妙なこだわりということではありません。
彼らはもともと大きな役が簡単に回ってくる立場ではなかった。だからこそ、とにかく何かで注目されなければいけない…まさに歌舞伎界の“叩き上げ”という存在。

だからこそ、全部が「自分を見てもらうためのアピール」だったのでは?と、思うわけです🤓

そう思ったとき、今回のアンケートでも、「かき氷:いちご味」だけじゃなく、

  • “なぜ好きなのか”
  • “どんな場面で食べたのか”
  • “他に好きな冷たいものは?”

――そんな言葉を添えられる役者さんこそ、
ファンに「あ、この人のことちょっと面白いな」と思ってもらえるものじゃないでしょうかね?

🌄 一番美しい景色に見る“らしさ”と“プロ意識”

さて次に、「一番美しい景色」という質問にも、なかなか面白い個性が表れていました。
海外旅行や公演先の絶景を挙げている人も多かったですが、

まずは、まっすぐすぎて思わずニヤけてしまったのが 中村米吉。

中村米吉
「新婚旅行で行ったスペイン・アンダルシア地方の風景。スマホの待ち受けにしています!」

📱💕 …いや〜新婚気分がまだまだ抜けきらないようですね(笑)
「スマホの待ち受けにしてます」まで言っちゃうあたり、奥さんとの旅がどれだけ楽しかったのかが伝わってきます。

そして、”おっ”と思わせたのが 中村隼人と市川中車。この2人からは、まさに“プロ魂”を感じます🔥

中村隼人
「カッパドキア(トルコ)の気球から見た景色」
市川中車
「富山・北アルプスの剱岳山頂に立った時、富士山の山頂までが見渡せて、日本の屋根が全部見えていた標高3000mの一面の空の見晴らし。」

🎈🌄 どちらも雄大なスケール感ですが、背景を知ると味わい深い。
隼人は9月にカッパドキアでの公演を控えており、これはかつて取材で訪れたときの話のようです。
中車は映画『剱岳 点の記』出演時の記憶でしょう。

📣 いずれも「仕事に関わる風景」です。
もちろん、純粋に素晴らしいと思っているのでしょうが、

トルコツアーを企画した日本旅行の関係者や映画『剱岳 点の記』を制作したスタッフがこれを読んだときどう思うか?
そういう背景を知っているファンが見たときどう感じるか…

そう考えるとなかなか粋なチョイスだとおもいます👏

また一緒に仕事したくなる役者さんじゃないでしょうかね?

そして次に、「素直でいいな〜😊」と思わされたのが、長三郎と團子の回答。

中村長三郎
「家から見た夕日🌅❄
市川團子
「小学校6年生の冬に見た、黒姫の一面の雪に、朝日が差し込んでいた光景です。❄️

二人とも海外のいろんなとこに行ったことはあるのでしょうが、こんな“身近な風景”や”子供の時の感動”を選ぶあたり感性が純粋なんだなあと思います

✍️ まあでも長三郎の場合、全体的に一言コメントが多くて、「お母さんに書けって言われて渋々答えたのかな〜😅」という気もしますが(笑)

そして今回私がもっとも唸らされたのがこの人👀

市川染五郎
「2022年8月、コロナ禍で上演された『東海道中膝栗毛』の千穐楽、急遽行われたカーテンコールで見た満員の客席。」

う〜む、これは…🤔

まさに“お客様と舞台”がすべて🎭という姿勢。

染五郎は、スポーツには興味がないとか言ってましたが、やはり“舞台がすべて”というところからくる一言なのだと思います。

綺麗な風景よりも、舞台に立てること、お客さんの笑顔😊、それが何より嬉しい――

これが若干20歳の青年の回答です

こういうコメント他にはいないだろうな〜と見ていたら、なんといました😲

中村扇雀
「1988年『きらら浮世伝』セゾン劇場の舞台上から着席に見えた山水画。
2001年『野田版研辰の討たれ』初日カーテンコール舞台上から見た総立ちの客席。
2004年ニューヨーク公演『夏祭浪花鑑』初日カーテンコール舞台上から見た外国人総立ちの客席。
全て一番です。」

染五郎とは少し意味合いがちがうと感じますが、舞台上から見た客席👥、それも三本立て。

その瞬間、その景色が、長く胸に残っているのでしょう💭
加えて勘三郎さんへの敬意でしょうか🙏

染五郎が“記憶の一点”なら、扇雀は“キャリアを重ねた者の記憶の軌跡”。

この筋書きを読んでるのは、ほとんどがファンか、ファンになりかけてる人たち📖

だったら、こういう場でこそ「ちょっとでも印象に残る」答えをすることって、大事な役者の仕事なんじゃないかなぁと🌟

一言で終わらせるか、それとも一歩踏み込むか➡️
そういう“伝えようとする姿勢”にこそ、ファンは心を動かされるのだと思うのです💡

🤣 やっぱラストは幸四郎でしょ!

……なんて、いろいろと考えてしまったわけですが――
最後にすんごいのが控えてました😳

我らが松本幸四郎

「一番美しい景色は?」という問いに、彼はこう答えました。

松本幸四郎
「先月、歌舞伎座『鬼平犯科帳』の最初の登場で、『火付盗賊改、長谷川平蔵である!』と言っている自分🙋‍♂️

……え?
“自分”⁉️🤣🤣🤣
いやもう、爆笑しました💥
染五郎のしみじみを読んだ直後だったので、もう破壊力がすごい

「景色とは?」「自己愛とは?」――そんな問いが一瞬よぎりましたが、
たぶん何も考えてないんだろうなっていうのがまた幸四郎😅

でもね、これが不思議と「彼なら言いそう」って思っちゃうんですよね〜
天然ボケ🤪と超絶自意識🪞が同居した、唯一無二の存在感😂

きっと本人も、他の人の回答を見て、
「えっ…みんな自然の話してるの⁉️」って顔してるんじゃないかと😲(笑)

ちなみに幸四郎は”6️⃣ 歌舞伎座で一番好きな場所は”という問いに、『暗くて狭い隅っこ』と答えています、どこやねん🤣

私は来月の『菅原伝授手習鑑』、仁左衛門さんのAプロでチケットを取ったんですが……
なんかBプロの幸四郎にしとけばよかったかな…?
「菅丞相やってる俺すげ〜」とか思いながら演じてそうで、逆に興味湧いてくるのが悔しい🤔🔥(笑)

いやほんと、見てて飽きない興味深い役者です、幸四郎は🤭

というわけで、筋書きアンケートだけでも役者さんたちのいろんな表情が見えて、とてもおもしろい企画でした☺️✨
ではでは、次は八月納涼歌舞伎・第二部の観劇記書きます!🎭✍️

おまけ:ネタイラスト

幸四郎と中車
幸四郎と中車
染五郎と團子
染五郎と團子
妖怪 すみっこぐらし
妖怪すみっこぐらし
ネタ元:歌舞伎座筋書 令和七年八月納涼歌舞伎『特別編 花競木挽賑』より
脚本:ミナミ
作画:Saku(AIアシスタント)