2025年5月歌舞伎座「團菊祭五月大歌舞伎」夜の部観劇記

2025年9月4日

襲名披露祝幕


令和七年(2025)五月二十三日(金)、
歌舞伎座「團菊祭五月大歌舞伎」を昼夜通しで観劇してまいりました! 前回の昼の部に続いて夜の部の観劇記です!🎭🎉

八代目・菊五郎六代目・菊之助の襲名披露公演となる舞台であり、夜の部は襲名披露口上もあります。わたくしミナミが直に見た歌舞伎座で思ったことやちょっと面白いなと感じた内容を紹介させていただきますね✨

なお、昼の部同様、演目の詳しいあらすじなどの内容を解説するものではないことをご理解ください🙇

➡️ 「團菊祭五月大歌舞伎」昼の部観劇記はコチラ

公演の詳しい内容については「歌舞伎美人」をご確認ください👇️
➡️ 令和七年五月「團菊祭五月大歌舞伎」

🟪義経腰越状

義経腰越状

🌸 令和7年(2025)5月歌舞伎座「團菊祭五月大歌舞伎」夜の部の幕開きは『義経腰越状』

この演目も副題として「五斗三番叟」という風に昼の部と同じく三番叟の舞踊が含まれる演目なんですけど……正直言って「何なのこれ?」という感じ😅

話の構造としては歌舞伎十八番『毛抜』にやや似たシチュエーション。ある"お家"に外部から人物が関わり、内紛や陰謀を巡る騒動に巻き込まれていくような🏯

『毛抜』では久米寺弾正が一見間抜けな色ボケ侍に見せかけて実は切れ者、最終的に”お家騒動”を解決する。

ところが本作において登場する五斗兵衛は、ただ飲んだくれて醜態をさらし、義経にも泉三郎にも見限られるという、なんとも救いのない展開🍶😵

中盤から登場する竹田奴たちによる華やかな立ち回り💥によって舞台に活気は出るものの、そのまま盛り上がりきらずに終幕を迎えます。結局話の核心部分は解決されず、物語としては未完のまま終わるような印象なんですね〜🤔

とはいえ、この『義経腰越状』が描こうとしている元ネタの歴史背景—すなわち義経の失脚や、大阪城の豊臣秀頼の悲劇—を考えれば、「解決しない」のが正解なのか?🧐

江戸時代の観客がこれをどう受け取っていたのか?「こうして豊臣が滅んだからこそ、いまの徳川の平和な世があるのだ」ということなのか? だとするとこれからの世の中にはあまり意味をなさなくなるのか? なんてことを考えさせられる演目でしたね💭

🟨口上 八代目尾上菊五郎 六代目尾上菊之助襲名披露

口上看板

そして襲名披露ではおなじみの『口上』です🎤 菊五郎は大名跡だから口上自体が一つの演目になりますが、まるる(中村莟玉)のときは演目の途中で突然口上が始まり、「へ〜こんな風に舞台途中でやるんだ」と驚いたのも今は昔👀

今回襲名に関わる尾上菊五郎家の三人(七代目・八代目菊五郎・六代目菊之助)に加え、尾上松緑、市川團十郎、中村梅玉、坂東玉三郎、坂東楽善という顔ぶれ✨

まず七代目菊五郎が挨拶し、今回の襲名への感謝と今後の意気込みを語る。その後、順に登壇者たちが祝辞を述べるわけですが……

🎙️松緑さんはごく普通の祝辞であっけない感じ。🎙️次の團十郎は、八代目菊五郎と同い年で、学校も同じだったというエピソードを披露。運動会では、互いの父親が不在の際、相手の父親が走ってくれたことなど、團十郎ならではのプライベートエピソード🤝✨ さらに、自身の息子・新之助と、菊五郎家の六代目・菊之助も同い年であることから、彼らが将来「九代目菊五郎」「十四代目團十郎」となる日まで、ぜひ見守ってほしいという菊之助へのエールも忘れない🎓🎭

🎙️続く梅玉さんは、七代目の父・七世梅幸との思い出に触れつつ、若き日の七代目と共に東横ホールで花形として舞台に立った日々を懐かしく語り、年上の七代目から”大人の遊び”、”浮名の流し方”を教わったが、自分には無理だったなどとユーモアも交えつつ、八代目のことを「カズ君」と親しげに呼び、彼の新しい歌舞伎を切り拓いてほしいとエールを送る。また、梅玉さんの娘が八代目と同い年であったことなど💌

👀ここでふと感じたのですが、梅玉さんには男の子の後継がなく(現在は莟玉を養子としている)、娘さんだけ。もしかすると自分の娘を八代目がもらってくれれば…と思っていたこともあったのでは…なんて想像がよぎりました。まあ、現実には八代目は吉右衛門さんの娘と結婚しているわけですが。

🎙️次なる口上は玉三郎丈。七代目とは舞台での共演、八代目には女形としての指導、六代目の芝居が好きだという話から、それが役者にとって何よりの幸せであると述べる玉三郎らしいエール。

中でも印象的だったのは、「皆様には私よりも長く、八代目菊五郎・六代目菊之助を贔屓にしていただきたい」という言葉。すでに70代を超えた玉三郎自身の時間の限界を感じさせる発言であり、同時に、舞台の後進への願いと責任のバトンを託す強い想いがにじむ🌸✨

そういえば玉三郎自身には後継者と呼べる役者は見当たらない。彼は”襲名”をどう見ているのでしょうか? 玉三郎丈にとっては名を受け継いでいくことではなく、"芸"を受け継がれることを望んでいるのか? だとすると玉三郎の教えを受けた役者たちはすべて玉三郎の後継者ということなのかな? 私にはわかるはずもないことですけどねぇ😌🍵

🎙️そして楽善さんの口上。こちらは非常にオーソドックスな祝辞に留まり、個人的なエピソードは特になかったか。松緑さんと同様、直属の上司とも言うべき七代目を前に、あまりくだけた話はしにくいという立場もあったのかと思うけど……なんか個人的なエピソード聞きたかった😓

十三代目團十郎襲名時に比べると、今回の口上は実に落ち着いた印象。あのときは壇上の多くが團十郎の先輩ばかりで、12代目團十郎(故人)への思い出話をこれでもかとやってたんだけどな〜(笑)

そして八代目菊五郎、六代目菊之助がそれぞれ襲名の決意を述べて、七代目菊五郎が最後を締めて口上は幕となりました🎉

🟩 弁天娘女男白浪

弁天娘女男白浪

🎭團菊祭五月大歌舞伎最後の演目『弁天娘女男白浪』。言わずと知れた『青砥稿花紅彩画』、通称「白浪五人男」の名場面を抜き出した短縮バージョンであり、今回は何と言っても八代目・尾上菊五郎が”菊五郎”として初めて弁天小僧に挑む注目の舞台🌟

🟢浜松屋店先の場

さて、舞台のほうはおなじみ浜松屋から始まります。冒頭から「橘屋!(たちばなや)」の大向こう!👏 これは番頭役の橘太郎さんへの掛け声。先月の『黒手組曲輪達引』では気弱な親兵衛だった彼が、今回は堂々たる番頭。すでに名物化している橘太郎の番頭への大向うとは気が利いてる🎉😙

さらに片岡亀蔵が悪次郎役で登場。登場してすぐ店に難癖をつけて引っ込む役だが、この人の小悪党は本当にしっくりくる😈

そして、弁天小僧(八代目・菊五郎)と南郷力丸(尾上松也)が登場。南郷は音羽屋の松也にとっても大役だが、なかなか堂に入った演技。松緑の鳶頭も「江戸っ子テンプレ」感満載で、最後には場をかき乱してしまうという、実に楽しい役どころだった👏😆

ここで今回もっとも気になっていた、例の名ゼリフ「知らざあ言って聞かせやしょう」の中の一節。「小耳に聞いた音羽屋の〜」と続くこの部分、菊五郎家ではじいさんと言い換えるのが通例。今回、八代目は何と言うのか注目していたが、聞こえてきたのは「小耳に効いた、とっつぁんの」!思わず心の中で「七代目〜!」と叫んでしまった。”とっつぁん”ですよ”とっつぁん”😆👂

話は進んで登場するのは日本駄右衛門・市川團十郎。正直、彼には南郷をやって欲しかった気持ちもあるが、弁天小僧が菊五郎である以上、駄右衛門は團十郎がやるべきなのでしょう。40代とは思えぬ貫禄と風格で、これからさらに磨きがかかっていくであろう予感にぞくぞくしますね😎

🟢稲瀬川勢揃いの場

そして舞台は「稲瀬川の勢揃いの場」へ。今回は襲名披露の6代目・菊之助を中心に、新之助、亀三郎、梅枝、眞秀の5人の若手というか子どもたちが勢ぞろい!👦 中でも最年少9歳の梅枝くんがとにかくかわいい。ちょっと傘を持つ手がフラフラしてるのも御愛嬌。一所懸命に台詞を言う姿は微笑ましくもあり、会場から笑いも起きていた😁

ただし、やってる本人は真剣なので、「子供心に笑われるのは傷つくだろうな〜」と少し複雑。でもオヤジたちも通過してきた道なのだから乗り越えていってほしい。

セリフの喋り方で一歩抜きん出てたと感じるのが新之助。花道では私の席からは姿が見えない位置にいながら、声を聞いた瞬間「おおっ」と思いましたよ🤨 これぞ團十郎の家系か!彼はすでに團十郎襲名で歌舞伎座で一人で主役を張ったこともあり、この点は他の子達より一歩抜きん出ているか。

菊之助は立ち姿が美しく、亀三郎も堂々としていた。眞秀は最年長らしくもっとも役にあった風格を見せる。

でも、このぐらいの年齢の時の差なんてあってなきが如し。「男子三日会わざればざれば刮目して見よ」ですから、これからどうなっていくことやら楽しみです😌💮

🟢極楽寺山門の場 滑川土橋の場

そしていよいよクライマックスへ…山門の上で弁天小僧の大立ち回り。以前見た七代目の映像よりも動きが早く激しく今どきの殺陣のよう。伝統的な演目でも、時代の変化に合わせているところもあるのか🥷💨

ここで意外なものが聞こえてきた「橘屋!」の大向う。なんと番頭役だった橘太郎さん、今度は捕り手としてまさかの再登場。浜松屋の最後には弁天小僧に叩かれ「痛い痛い」と泣いていた恨みを晴らしに来たか!と思わず笑いが🤭

そして見ごたえのある”がんどう返し”。三階席からはひっくり返るガンドウの上で踏ん張る八代目の姿、どこまで耐えられるか?と見ていたが見えてる間は頑張ってました。こういうとこをチェックできるのが三階席のいいところ😊👍

そして大詰め。山門がせり上がり、日本駄右衛門(團十郎)が登場。そして青砥藤綱役の七代目・菊五郎が、家臣の八代目とともに現れる。藤綱の「胡蝶の香合」拾得エピソードを通して正義と美徳が描かれ、歌舞伎あるあるの「決着は次の機会に」の場面ですが、三階B席からは駄右衛門の顔はせり上がりとともに見えなくなります。こういうとこが三階席のダメなところです😣👎

とにもかくにも、最後に三人(七代目・八代目・團十郎)が揃う姿は、まさに團菊祭のフィナーレにふさわしい絵面。次代へとつながる継承と華やかさ、すべてが詰まった一幕でありました〜👏🎌🗻

夜の歌舞伎座